豊胸手術は、乳房内部にシリコンバッグ・ヒアルロン酸・脂肪などを入れてバストアップ効果を得る美容整形です。
乳房に関わる施術と聞くと、「赤ちゃんへの授乳に影響はないの?」と不安に感じる女性もいます。
今後妊娠の希望がある方は特に、豊胸手術が授乳や母乳に与える影響について知っておきたいのではないでしょうか。
この記事では、豊胸手術が授乳にどのような影響を与えるのか、また、卒乳後に豊胸手術を行う適切なタイミングなどを解説します。
豊胸手術の授乳や母乳への影響について
- 豊胸手術は授乳に影響がありますか?
- 結論からいうと、豊胸手術が授乳に悪影響を与えることはほとんどありません。まず母乳は妊娠によって女性ホルモンが活発化し乳房内が発達することで起きる現象です。
乳腺内で母乳が作られ、赤ちゃんが乳頭を吸う力で乳管を通って授乳されるのです。
豊胸手術ではこれらの乳腺や乳頭に直接触れることはありません。組織の間にある脂肪層や乳腺よりも下にある層にシリコンバッグ・脂肪・ヒアルロン酸などのボリュームを出す物質を入れるため、授乳を妨げることはないのです。
- 母乳に悪影響が出ることはありますか?
- 母乳に対しても、授乳そのものと同様に豊胸手術が悪影響を与えることはないでしょう。前述した通り、母乳は乳房全体で作られるのではなく乳腺内で分泌されます。
乳腺内に溜まった母乳は、外部から赤ちゃんが吸い上げたり、母乳マッサージを行ったりすると外に出ていきます。脂肪層や乳腺の下に入れた豊胸用の挿入物や注入物が乳腺に浸透することはありません。そのため、豊胸手術をしているから母乳の質が悪くなるというトラブルは起きないのでご安心ください。
- 授乳や母乳に影響を与える可能性があるのはどのようなケースですか?
- 不適切な手術によって乳房にトラブルが起きている場合は、授乳・母乳に影響を及ぼす可能性があります。豊胸手術によって影響が出る恐れがあるパターンは以下の3つです。
- 炎症が起きたとき
- 感染症が発症したとき
- 乳房の組織が壊れたとき
炎症が起きる原因はヒアルロン酸の品質・シリコンバッグの大きさ・脂肪の量などを誤ることです。乳腺・乳管で炎症が起きた場合は、授乳・母乳にも影響が出てくるでしょう。また、大量の脂肪を一気に注入すると乳房内で上手く定着せず、硬いしこりとなって残るケースがあります。
このしこりが乳腺・乳管を刺激して授乳を妨げることもあるため注意しましょう。そのほかには、シリコンバッグの劣化も悪影響の原因です。乳房内部でシリコンバッグが破損すると痛みが起きるのですが、これが原因で授乳を上手く行えないというリスクも存在します。
さらに、不衛生な環境での施術で感染症が起きたり、医師の技術不足によって乳腺・乳管が損傷したりといったトラブルでも授乳に影響を及ぼします。不要なトラブルを避けるためにも、施術を依頼するクリニック選びは慎重に行いましょう。
卒乳後に豊胸手術を行うタイミング
- 妊娠中や授乳中に豊胸手術を行うことはできますか?
- 妊娠中・授乳中の豊胸手術はおすすめできない行為です。そもそも多くのクリニックでは、赤ちゃんはもちろん、女性本人の安全面を考え妊娠中・授乳中の豊胸手術を受け入れていません。
豊胸手術では、豊胸する材料を入れるため乳房にメスを入れて傷を作ります。切開手術を用いるシリコンバッグ式は傷がやや大きく、注射でもできるヒアルロン酸・脂肪注入は小さいという特徴はありますが、手術を行うことに変わりはありません。そのため、万が一施術後に細菌が侵入し感染症が引き起こされると、母体・子どもどちらにも大きなリスクが降りかかります。
また、豊胸手術には一定期間のダウンタイムが存在します。施術によって期間は異なりますが、ダウンタイム中は痛み・腫れ・出血などの症状が起きるため、デリケートな妊娠中・授乳中には避けた方が良いでしょう。
- 卒乳後に豊胸手術を行っても大丈夫なタイミングを教えてください。
- 卒乳後は胸の変化がおさまったタイミングで豊胸手術を行いましょう。妊娠すると、体内ではホルモンの一種「プロラクチン」が増加し乳腺を発達させます。このプロラクチンは、脂肪をつきやすくするため妊娠中はバストサイズも大きくなりがちです。
その後、出産を終えると徐々に分泌量が減っていくのですが、赤ちゃんが乳頭を吸う刺激で再び分泌され続けます。つまり、授乳中はある程度サイズアップされた乳房が維持されるのです。しかし、卒乳を迎えると刺激によるプロラクチン分泌がおさまるので、徐々に乳房が元のサイズに戻っていきます。
卒乳直後はこのように、体が妊娠状態から通常に戻ろうとする期間です。この時期に豊胸手術を受けたとしても、「元に戻ろう」とする体の働きによって胸の形が変わったり、理想のバストサイズが作れなかったりする可能性があります。
そのため、卒乳後に豊胸手術を行う場合には、胸の変化が完全に収まってからにしましょう。個人差はありますが、概ね6ヶ月程度経過した頃がおすすめです。
- 卒乳後に豊胸手術を行うメリットを教えてください。
- 卒乳後の豊胸手術は、サイズアップしやすいことがメリットです。妊娠中・授乳中はホルモン分泌によって胸が大きくなるため、乳房の皮膚が引き伸ばされています。伸びた皮膚は卒乳後も元に戻らないため、卒乳後のバストはたるみが出て下垂気味になる傾向があります。しかし、これは言い換えれば皮膚にゆとりが出たということです。
この状態を上手く利用すれば、授乳中の大きなバストサイズまで豊胸することも可能です。授乳中のサイズアップや皮膚の伸び方には個人差があるため、担当の医師と相談しながら大きくするサイズを検討していきましょう。また、異物を入れることで、違和感・痛みなどが持続する場合もあります。
傷跡が残る・血種ができてしまう・感染を起こすなどの合併症のほかに、施術後数年経過して、バッグが破裂するなどのリスクを伴うなどのデメリットも同時に理解しておくことが重要です。費用も自費診療であるため高額になるケースもあります。例えばシリコンバッグであれば約50万円(税込)となり、種類や施術クリニックによっても変わります。
- 卒乳後に豊胸手術を行う場合の注意点を教えてください。
- 卒乳後に豊胸手術を受ける際の注意点は、育児との兼ね合いです。豊胸手術の内容によっては長いダウンタイムが発生するため、施術後に日常生活へ戻るのに一定の時間を要します。生まれたばかりの赤ちゃんを世話するのはとても大変で、自身の体調が万全でなければ思うように動けない可能性もあるでしょう。
もちろん、家族や配偶者のサポートを受けられるのであれば支障は軽減されます。しかし、理解を得られなかったときには心因的にも大きなストレスを抱えてしまうでしょう。卒乳後に豊胸手術をしたいと感じたときには、まず自分の環境を安定させられるかを良く考え、受け入れ協力してくれる方を確保してから臨んでください。
豊胸手術のダウンタイムや手術後の注意点
- 豊胸手術のダウンタイムについて教えてください。
- 豊胸手術のダウンタイムは施術方法によって異なります。その中でも、ダウンタイムが長いのはシリコンバッグ式豊胸術です。バッグを収納するために組織を剥離させるため、約1〜2週間は特に強い痛みを感じるでしょう。挿入した場所にもよりますが最長2ヶ月程度は痛みが続く場合もあります。
一方で、脂肪注入豊胸術はシリコンバッグ式に比べるとダウンタイムが短めな傾向です。脂肪注入のダウンタイムはおよそ1週間程度で、痛みの度合いもそれほど強くありません。脂肪を取った場所も筋肉痛に似た痛みを発しますが、これも1〜2週間程度で収まります。
ヒアルロン酸注入豊胸術は注射器で行うため、ダウンタイム中の痛みはほとんどありません。腫れ・内出血が起きる場合もありますがおよそ2週間程度で改善するでしょう。
- 職場復帰はいつからできますか?
- 豊胸手術後の職場復帰は、デスクワークの場合、最短でも翌日から3日後を目安としてください。施術方法や切開の位置によっても復帰時期は異なりますが、あまり身体を動かさない業務であれば問題無く行えるでしょう。
接客業や立ち仕事など、身体を動かす業務が多い場合は3日〜7日程度は安静にしてください。ただし、体調の回復には個人差があるため、さらに長期の療養が必要な場合もあります。また、圧迫固定をしている場合は術後1ヶ月程度動きの制限が必要なので、業務内容を適時調節しましょう。
- 豊胸手術後の過ごし方の注意点を教えてください。
- 豊胸手術の直後は、以下の注意点を守って安静にしてください。
- 飲酒・喫煙を避ける
- 激しい運動を行わない
- 入浴を避ける
ダウンタイム中の過度な血行促進はむくみ・腫れ・炎症を長引かせる恐れがあります。飲酒・喫煙は血管を拡張する作用があるので豊胸手術後は避けた方が良いでしょう。同様に、血行を良くする効果がある激しい運動・入浴は控えることが賢明です。ダウンタイムが終わるまでは軽いシャワーや濡れタオルで身体の清潔を保ってください。
編集部まとめ
豊胸手術が授乳・母乳に与える影響については、理解していただけたでしょうか。基本的に、豊胸手術が母乳を作り外に出す乳腺・乳管に直接影響を与えることはありません。
しかし、誤った処置で炎症・感染症・組織の損傷などのトラブルが起きたときには、授乳を妨げる原因となる恐れもあります。
また、妊娠中・授乳中は女性の身体が変わる時期で、乳房も赤ちゃんを育てるために大きく変化します。
この時期に豊胸手術を行うと理想の形にならない可能性が高いので、妊娠中・授乳中の豊胸手術は避けることがおすすめです。
豊胸手術を行うタイミングは赤ちゃんが無事生まれ卒乳した後、バストの形が通常に戻る6ヶ月前後を目安にしましょう。
参考文献