ヒアルロン酸は、ムコ多糖類の一種で、肌や関節などに存在しています。そして、肌の保湿や関節の潤滑性を保つ役割があります。
そんなヒアルロン酸を使用した注射は、昨今かなり普及してきており、施術されたことがある方や施術を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、ヒアルロン酸注射にはデメリットやアレルギー反応のリスクも存在します。そこで、本記事ではヒアルロン酸注射のデメリットやアレルギー反応について、以下の点を中心として解説します。
- ヒアルロン酸注射を打つデメリット
- ヒアルロン酸注射のアレルギー反応
- ヒアルロン酸注射でアレルギー反応が出た場合の対処法
ヒアルロン酸注射のデメリットやアレルギー反応について理解を深めるためにも参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
ヒアルロン酸注射とは
ヒアルロン酸注射は、加齢により減少する体内の保湿成分「ヒアルロン酸」を補う美容施術です。肌は、年齢とともにヒアルロン酸が減少するので、その結果、しわやほうれい線が目立ち、肌のハリや弾力が失われます。
ヒアルロン酸注射は、しわや顔のくぼみが気になる部位にヒアルロン酸を注射することで、肌を内側からふっくらさせ、ハリと弾力を取り戻し、若々しい外見に改善するものです。ヒアルロン酸の種類は多岐にわたり、施術する部位や肌の状態に応じて適切なものが選ばれます。
ヒアルロン酸注射を打つメリット
ヒアルロン酸注射はデメリットがありますが、メリットももちろん存在します。まずは、ヒアルロン酸注射のメリットから紹介します。
ダウンタイムが少ないことが多い
ヒアルロン酸注射の大きなメリットの一つは、ダウンタイムが短いことです。ヒアルロン酸注射は注射によるもので、切開を伴わないため、体への負担が少なく、切開を伴う施術よりも回復期間は短く済みます。
施術後に軽度の腫れや赤みが生じることがありますが、これらの症状は、数日から数週間で自然に解消されるとされています。
また、注射部位に微細な針穴が残ることがありますが、穴は目立ちにくく、施術翌日からメイクで隠すことが可能とされます。そのため、忙しい日常を送る人や、施術を他人に知られたくない人に適している施術とされています。
施術時間が短いことが多い
ヒアルロン酸注射は、施術時間が短いメリットもあります。注射による処置なので、施術時間のみであれば5分から10分程度で完了し、忙しい日常を送る人にとっても理想的なよい選択肢となる美容施術です。時間をかけずに顔などの悩みの解決が期待でき、仕事や家庭の合間に気軽に受けられる点が、ヒアルロン酸注射の魅力です。
痛みに配慮されている
ヒアルロン酸注射は、痛みへの配慮が十分にされている施術法です。多くのクリニックで、患者さんの不安を軽減するために麻酔クリームや局所麻酔が使用されており、痛みをできるだけ抑えています。
なかでも、極細針の使用や麻酔成分を含むヒアルロン酸製剤を注射しているクリニックもあり、そういった場合は施術時の痛みはほとんど感じられないといわれています。
痛みに敏感な方でも、施術前のカウンセリングなどを通じて麻酔の有無や調整が可能な場合もあるので、痛みについて不安な方は、検討しているクリニックに確認してみましょう。
ヒアルロン酸注射を打つデメリット
続いては、ヒアルロン酸注射を打つデメリットについてです。デメリットがない施術など存在しないので、施術を受ける前にデメリットについてもしっかり理解しましょう
持続時間が短い
ヒアルロン酸注射は一時的な効果しか期待できません。ヒアルロン酸製剤は体内で徐々に吸収されていくので、持続時間には限りがあります。期待できるとされる効果は半年から1年程度で、製剤によっては2年程度持続するものもあるといわれていますが、永久的ではありません。
この特性により、継続的にヒアルロン酸を補いたい場合は定期的な再注射が必要となり、長期的に見るとコストがかさむ可能性があります。そして質の高い製剤を選択すると一回あたりの費用も高くなりますが、安定性や持続性を考慮すると、その価値はあるといえるでしょう。
しこりができる可能性もある
ヒアルロン酸注射には、皮膚表面が不均一になる、いわゆる「しこり」ができるリスクが伴います。しこりができてしまう理由は、主に注射されたヒアルロン酸が適切に分散せずに塊となることで起こります。
なかでも、注射量が多すぎる場合や、同じ箇所に繰り返し注射することで、しこりが形成されやすくなります。また、製剤の種類によってもしこりができやすい場合があり、硬いタイプのヒアルロン酸を皮膚の薄い部位に使用すると、しこりが目立つことがあります。
しこりのリスクは、医師の技術や経験に大きく依存します。適切な製剤の選択、注射量、注射箇所の選定には、高度な知識と技術が必要です。
特に顔のようなデリケートな部位では、皮膚の厚さや注射深度を正確に把握し、細心の注意を払って注射する必要があります。したがって、医師の技術が不足している場合の施術は、しこりのリスクを高める可能性があります。
しこりが発生した場合、時間が経過すれば自然に解消されることもありますが、場合によっては追加の施術が必要になることもあります。
そのため、ヒアルロン酸注射を検討する際には、施術を行うクリニックや医師の選択には十分な注意が必要です。適切なカウンセリングと技術力の高い医師による施術を選ぶことで、しこりのリスクを抑えられるとされています。
チンダル現象が起こる可能性がある
ヒアルロン酸注射におけるデメリットの一つとして、チンダル現象が発生する可能性もあります。チンダル現象とは、目元など皮膚が薄い部位にヒアルロン酸を注射した際に見られる副作用で、肌が青っぽく透けて見える現象を指します。
原因は、ヒアルロン酸が皮膚の浅い層に集中して注射されることにあり、その結果、光の散乱により青白い色が現れるとされています。チンダル現象は、注射されるヒアルロン酸の種類や、医師の技術によっても影響される可能性があります。
また、チンダル現象が顕著に現れ、見た目に影響が出ている場合は、ヒアルロン酸を溶解する施術が必要になることがあり、追加の手間とコストがかかってしまいます。
ヒアルロン酸注射とアレルギー反応とは
個人差はありますが、ヒアルロン酸注射を受ける際はアレルギー反応にも気を付けなければいけません。ここからは、ヒアルロン酸注射とアレルギー反応について詳しく解説します。
腫れ
ヒアルロン酸注射後に見られる反応として、施術箇所の腫れが挙げられます。この腫れは、注射による物理的な刺激などによるもので、多くの場合、数日から1週間程度で自然に収まるとされています。
なかでも皮膚が薄い目の下などでは、腫れや浮腫みが顕著に現れやすいです。したがって、施術の結果を正確に評価するには1~2週間の時間を要することがあります。
しかし、腫れが長引く場合や、かゆみ、蕁麻疹、痛みなどの症状を伴う場合は、アレルギー反応の可能性が考えられます。ヒアルロン酸は体内でも生成される成分であり、通常は体との高い親和性があるため、重篤なアレルギー反応は稀ですが、免疫系の異常反応により、注射部位に炎症を引き起こすことがあります。
このような場合、前述したヒアルロン酸を分解する注射やステロイド剤の投与が必要になることもあります。腫れやその他の症状が1週間以上改善しない場合は、アレルギー反応を疑いましょう。
熱感
ヒアルロン酸注射後に施術箇所が熱を持つ「熱感」は、一般的な反応の一つといわれていますが、なかでも腫れや赤みとともに現れる場合、アレルギー反応の兆候である可能性があります。熱感のような症状は、体内での異常反応を示していることが少なくないので、アレルギーのサインとして認識することが重要です。
赤み
ヒアルロン酸注射後に現れる「赤み」は、施術による一時的な反応であり、ほかの反応と同じように、多くの場合は数日内に自然に薄れます。しかし、赤みが持続する場合や悪化する場合は、アレルギー反応の可能性があるとされています。
注射に用いられるヒアルロン酸製剤は、体内のヒアルロン酸とは異なり、分解を遅らせるための添加物が含まれていることが多く、これらの添加物に対するアレルギー反応が赤みの原因となることがあります。
製剤によっては、不純物の除去水準の低さや架橋剤の質に問題があるものもあり、これらが原因でアレルギー反応を引き起こしやすくなる可能性もあります。
一度アレルギー反応を示した製剤には再び反応するリスクが高いため、慎重な製剤選択が必要です。こういった場合は認証を受けているヒアルロン酸製剤の使用が推奨されます。
ヒアルロン酸注射でアレルギー反応が出た場合の対処法
最後に、前述したアレルギー反応が出た場合の対応について、紹介します。もしアレルギー反応が疑われる場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
ヒアルロン酸分解注射
ヒアルロン酸注射後にアレルギー反応が現れた場合、ヒアルロン酸分解注射(ヒアルロニダーゼ)が対処法として有効とされる場合があります。ヒアルロン酸分解注射では、ヒアルロン酸を分解する酵素であるヒアルロニダーゼを使用し、注射されたヒアルロン酸製剤を迅速に溶解・除去します。
注射直後から効果が期待でき、数日から数週間でアレルギー症状の腫れや赤みが治まることが期待できます。ただし、ヒアルロニダーゼ自体が動物由来の場合もあり、稀に動物由来がゆえにアレルギー反応を示す人もいるため、使用前には医師との十分な相談が必要です。
抗アレルギー薬投与
ヒアルロン酸注射後にアレルギー反応が見られ、ヒアルロン酸分解注射による対応後も症状が改善しない際は、抗アレルギー薬やステロイド薬の使用が考慮されます。
軽度の反応であれば、抗ヒスタミン薬や軽量のステロイド剤で症状が収まることが多いようですが、重症の場合や急激に症状が進行する場合は、より強力なステロイド剤の点滴や酸素投与、さらには気道確保のための挿管など、迅速かつ適切な医療措置が必要になる可能性があります。
ヒアルロン酸注射後のアレルギー反応以外の症状
ヒアルロン酸注射は美容医療のなかでも注目を集めている施術ですが、アレルギー反応以外にもいくつかの症状(合併症)が報告されています。その合併症のなかでも重要なのが、「血流障害」です。
血流障害は、ヒアルロン酸が血管内に侵入することや、血管を圧迫して血流を悪化させることで起こります。血流が不足したり悪化したりすると、酸素や栄養の供給が滞り、場合によっては、組織壊死に至る可能性があります。
なかでも、眼球への血流が阻害されると、失明につながる恐れがあります。また、皮膚の壊死も血流障害によって発生する可能性がある深刻な副作用の一つです。
血流障害のリスクをできるだけ抑えるためには、施術を行う医師の技術や経験が重要です。正確な注射技術によって、ヒアルロン酸が適切な深さと量で注射されることが、合併症を防ぐ鍵となります。
血流障害の発見が遅れると、状態の改善が難しくなるため、万が一血流障害の兆候が見られた場合には、迅速にヒアルロン酸溶解剤(ヒアルロニダーゼ)を注射しなければなりません。
ヒアルロン酸注射の合併症は、適切な対応により管理可能とされていますが、施術を受ける際には、リスクについて十分に理解し、経験豊富な医師を選ぶことが不可欠です。見た目の改善だけでなく、安全性への配慮も極めて重要となります。
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まとめ
ここまでヒアルロン酸注射のデメリットやアレルギー反応についてお伝えしてきました。ヒアルロン酸注射のデメリットやアレルギー反応についてまとめると以下のとおりです。
- ヒアルロン酸注射を打つデメリットは、持続時間が短いことや、しこりができる可能性があること、皮膚が薄い部位にヒアルロン酸を注射した際に肌が青っぽく透けて見える、チンダル現象が起こる可能性があることなど
- ヒアルロン酸注射では、注射後の施術箇所に腫れや熱感、赤みなどのアレルギー反応が現れる可能性があり、製剤の質の低さによってアレルギー反応を引き起こしやすくなる可能性もある
- ヒアルロン酸注射後にアレルギー反応が疑われる場合は、すぐに医師の診察を受け、場合によってはヒアルロニダーゼを用いてのヒアルロン酸分解注射や、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬の投与が必要となる
本記事のヒアルロン酸注射についての情報が、ヒアルロン酸注射を検討している方などの一助になれば幸いです。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。