パートナーとのセックスに対して「満足できるような快感を得られない」「不感症じゃないかと指摘された」と悩んでいる方も少なくないでしょう。このような悩みを抱えている場合、「自分に何か原因があるのでは」「治療方法を知りたい」と思うはずです。そこで本記事では、不感症の特徴や原因、治療方法などについてご紹介します。
不感症の基本情報
「セックスが気持ちよくない」という状態に対して、多くの方が第一に考えるのが「不感症」です。不感症は医学で用いられる正式な名称ではなく、現代では「女性性機能障害」として扱われています。女性性機能障害にはさまざまなパターンが存在するため、何が原因となっているかを理解して、それに応じた治療法や対処法を考えることが大切です。
不感症(女性性機能障害)について
不感症とは、性欲があるにもかかわらず、セックスで性的な快感を覚えられない状態を指します。これに対し、女性性機能障害は3カ月以上継続してセックスに関するトラブルを抱えている状態を指します。例えば、「性的興味の欠如」や「セックスが苦痛」「セックスで満足感が得られない」などがトラブルにあたります。また、物理的に挿入がうまくできない「挿入障害」や、オーガズム(絶頂)を迎えることができない「オーガズム障害」なども女性性機能障害に含まれています。
実際、一般社団法人 日本家族計画協会家族計画研究センターが行ったジャパン・セックスサーベイ2020によると、20~40代女性の約66%がセックスで痛みを感じていて、さらにその中の42.2%がセックスに対して、痛みがあって「満足していない」「満足度は高くない」と回答しています。このデータからも不感症に陥るのは、決して珍しくないということがわかります。
不感症のチェック項目
では、どのような症状があれば不感症と言えるのでしょうか。「性欲はあるがセックスが好きになれない」「セックスはできるけど気持ちいいとは感じない」「セックスのときに濡れにくく痛みを感じやすい」「セックスで性的な快感やオーガズムを得にくい」「ローションなどを使用しても潤い不足だと感じる」といった場合は、不感症の可能性があると言えます。ただし、性行為の経験がなかったり一人のパートナーとしか経験がなかったりする場合は、不感症に該当しないケースもあります。
不感症の原因
不感症は、セックスに対する忌避感やクリトリスの状態、膣のゆるみ、ホルモンバランスの影響などが原因となります。それぞれの原因について詳しくご紹介しますので、自分が当てはまっているかどうか確認してみてください。
セックスに対する忌避感
忌避感とは、ある物事を嫌って避けたいと思う感情のことです。セックスの経験が少なく緊張していたり前向きに考えられなかったりする場合、性的興奮が起こりにくく、膣内が十分に濡れずに不感症となり得ます。また、「セックスがとても痛かった」「望まないセックスをしたことがある」という経験により、無意識に体に力が入ってしまって濡れにくくなり性的快感が得られないというケースもあります。このような原因が考えられる場合、無理にセックスをするのではなく、パートナーとのスキンシップにじっくりと時間をかける、不安要素を取りのぞくといったことから始めるのが大切です。
クリトリス包茎
クリトリス包茎とは、クリトリスに余分な皮が覆い被さり、刺激を受けても露出しにくい、あるいは感度が上がらない状態を指します。クリトリス包茎では、クリトリスと皮が癒着しやすく不快感や痛みを覚えることがあります。また、皮がむけにくいことで垢がたまり、パートナーに異臭を指摘されてセックスに対する自信を失ってしまうケースも少なくありません。詳しくは後述しますが、クリトリス包茎は手術を受けることで根本的な改善が見込めます。
膣のゆるみ
加齢や出産などの影響で膣がゆるんでしまうことも不感症の原因となります。年齢を重ねていくと、粘膜のコラーゲンが減少したり膣圧が低下したりします。また、出産時には膣壁が大きく引き延ばされ、膣がゆるむ原因となります。さらに、運動不足や姿勢の悪さ、肥満なども骨盤底筋に悪影響を与え、膣圧低下につながります。
エストロゲンの減少
エストロゲンとは、卵巣で分泌される女性ホルモンのことです。エストロゲンには女性らしい体を形成する働きがあり、この分泌量が少なくなると膣粘膜が薄くなったり膣の萎縮が進むことも。また、濡れにくくなる原因にもなるため、不感症につながります。エストロゲンは、更年期や閉経前後、産後、授乳期に低下する傾向があります。
不感症の治療方法
ここからは、不感症の治療方法についてご紹介します。治療方法は主に「クリトリス包茎手術」「膣のゆるみ改善」「Gショット手術」の3つです。原因によってどの方法が適しているかは異なりますので、ご自身の不感症の原因を踏まえた上で、医師と相談して治療法をご検討ください。
クリトリス包茎手術
クリトリス包茎手術とは、清潔さと陰核への性的刺激の向上を目的に、クリトリスを覆っている包皮を切除する方法です。「デリケートゾーンのにおいが気になる」「セックスの際、あまり感じない」「包皮ポケットに垢がたまりやすく洗いにくい」という方におすすめです。
ただ、クリトリスには女性の感覚を高める神経が集中しており、包皮はクリトリスを守る働きを担っているため、むやみやたらに包皮を取りのぞけばいいわけではありません。また、切除範囲は術後の後遺症を大きく左右するため、本当に手術が必要かどうか、どれくらい包皮を切除するかは、しっかりと医師の診断を受けて判断することが大切です。
なお、この手術の費用相場は10〜20万円です。クリニックや切除範囲によって差はありますが、手術にかかる時間は30〜60分ほどで、局所麻酔や静脈麻酔を施してから手術を行うのが一般的です。術後は痛みや腫れ・出血などが見られることがありますが、1週間ほどで落ち着きます。
膣のゆるみの治療
フェイスラインのたるみやシワの改善が見込めるハイフという機器をご存じですか?この技術を応用し、専用のハンドピースを使用することで膣のゆるみを改善する方法もあります。
これは、出産や加齢の影響で膣の締まりがなくなって悩んでいる方や膣のゆるみを改善したいが手術は受けたくないという方、感度の低下に悩む方などに適しています。また、コラーゲンの生成を促す作用があるため、ハリや弾力アップにも効果的です。
この施術はレーザー治療などとは異なり、特殊な超音波を当てるため膣壁を傷つけることなく行うことができます。出血やおりもの増加の心配もありません。施術時間は約20分と短く、施術当日の入浴も可能です。費用相場は10万〜20万円ほどとなっています。
この他に、膣壁にボリュームアップ効果の高いヒアルロン酸を注入することで、加齢によりゆるんでしまった膣壁にハリを与えつつ、膣の内腔容積を減らすという治療方法もあります。
Gショット手術
ここまで、性的快感を得る部位としてクリトリスに関する話題を多く挙げていましたが、Gスポットという部位もあります。Gスポットは膣開口部から1〜5センチほどのところにあり、挿入による刺激で快感を得るとされています。ただ、Gスポットで得られる快感には個人差があり、オーガズムを感じない方も一定数存在します。そこでGスポットでオーガズムを感じられない方に適しているのがGショット手術です。
Gショットについて
ここからはGショット手術について詳しくご説明します。
Gショットとは
Gショットとは、Gスポットにヒアルロン酸を注入し、隆起を作ることで挿入による刺激を感じやすくする施術です。セックス時の感度が低い方や不妊症に悩んでいる方が受ける施術の一つで、メスを使わず皮膚を切る必要もないため、切開手術に抵抗感のある方にも推奨されています。
施術時間は15〜30分ほどで、通院や入院は不要です。注入したヒアルロン酸は半年から1年ほどで体内に吸収されていきますが、体へ悪影響を与えることはありません。クリニックによっては麻酔を使用することもでき、痛みやリスクが少なく初めての方でも気兼ねなく受けられる施術となっています。
Gショットのメリット
Gショットを受けるメリットは主に4つあります。1つ目は「感度が向上すること」です。Gスポットに膨らみを持たせることによって、挿入時の刺激が感じやすくなります。これまでに膣でオーガズムを感じたことがない方は、Gショットを行うことで今までにない快感を得ることができるでしょう。
2つ目は「男性の満足度もアップさせられる」ということです。Gスポットに隆起ができることで膣の締まりもよくなり、男性も快感を得やすくなります。これにより、パートナーとの性生活を楽しむきっかけにもなります。
3つ目は「痛みが少ないこと」です。Gショットは注射のみの施術であるため、体への負担がほとんどかかりません。そもそもGスポットは痛みを感じにくい部位でもあるので、痛みが苦手という方でもリラックスして施術を受けることができます。
「日常生活に支障がない」ということも大きなメリットと言えます。前述したように、Gショットではメスを使用しないため、施術後の日常生活に支障がなく、お仕事や家事などを制約なく行えます。さらに、施術を受けたことが周りの人やパートナーにバレにくいというのもメリットの一つです。
Gショットのデメリット
メリットがある一方でデメリットももちろんあります。一つは施術を受けても感度が上がらない場合があるということです。特に、もともとGスポットで快感を得られない方は、感度が上がりにくい傾向にあります。また、注入したヒアルロン酸の効果は永久ではありません。効果を維持するためには定期的な補充やメンテナンスが必要となり、その分の通院費用や施術費用がかかってしまいます。
Gショットのダウンタイム
Gショットのメリットの項目で、基本的に施術後の日常生活に影響はないとお伝えしましたが、副作用としてだるさや頭痛、むくみ、発熱などを生じる場合もあります。また、感染症などを避けるため、術後3日間はセックスを控えるようにしましょう。
不感症治療のためのクリニック選び
「不感症の治療をしたいけれど、何を基準にクリニックを選べばいいかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。そこで、不感症治療が行える診療科やクリニック選びのポイントをご紹介します。
不感症治療ができる診療科
不感症治療が行えるのは、美容外科や形成外科、婦人科を標榜しているクリニックです。ただ、これらの科目の診療を行っていても不感症治療に対応していなかったり、逆に美容皮膚科で不感症治療を行っていたりする場合もあります。事前にホームページを確認するなどして、希望する治療が受けられるか確認することをおすすめします。
クリニック選びで重視すべきポイント
数あるクリニックの中からどのクリニックで治療や施術を受けるか迷っている場合は、これから紹介する3つのポイントを意識してみてください。
1つ目は「丁寧な対応をしてくれるかどうか」です。性生活や性器といったデリケートなお悩みにしっかりと耳を傾けてくれる、かつ本人の希望を理解してくれて安心して任せられるクリニックを選ぶようにしましょう。
2つ目は「医師が医師としてのキャリアを持っているか」を確認しましょう。専門医資格の有無や体の内側・外側の両面をサポートしてくれるかどうかなど、知識や経験が豊富な医師が在籍しているクリニックを選ぶことが大切です。
3つ目のポイントは「通いやすさ」です。これは立地に関することだけでなく、スタッフが全員女性か、プライバシーに配慮されているか、医療機関内で他人と顔を合わせる機会が少ないかといったことも含まれています。不感症はデリケートな問題ですので、気兼ねなく通える環境が整っているクリニックを選びたいところです。
まとめ
不感症の原因や対処法・治療法などについてまとめましたが、参考になりましたでしょうか。性に関するお悩みはなかなか人には話しづらいことですが、パートナーとの性生活を楽しめないこと、苦痛に感じることは大きなストレスとなります。ときにはパートナーとじっくりと話し合い、セックスに対する不安を解消することも大切です。ぜひこの記事を参考に、より良い性生活を目指しましょう。
参考文献