再生医療を応用した血液豊胸をご存じですか。血液成分を使ってバストの自己治癒力を引き出し、まるで「自らバストが育っている」かのようなバストアップを狙う豊胸術です。
なかでもPRP注入療法は安全性が高く、施術も皮下注射で完結する点が特徴です。そのため体にメスを入れる手術に抵抗がある人・ダウンタイムの長さがネックになっている人から支持を集めています。
今回はPRP注入療法の効果について解説します。脂肪注入での豊胸手術とも比較しているため、豊胸の方法について悩んでいる人は要チェックです。
血液豊胸とは?
血液豊胸とは自身の加工した血液を使ってバストアップを狙う豊胸術です。使用する血液中の成分・効果の違いから、大きく以下の2種類に分けられます。
- PRP療法
- PPP療法
PRP療法では血液中のPRP(多血小板血漿)が用いられます。
PRPは止血・傷んだ組織の修復といった機能を持つ、血小板を多く含んだ血漿です。再生医療においては自己治癒力を活かした皮膚・骨などの傷の治療に用いられています。
PRP療法ではバスト内の細胞の増殖を促すことでバストアップ効果が期待できます。施術は自身の血液を遠心分離機にかけ血小板の多い血液に加工し、バストの皮下に注入されるのみで簡潔です。
PPP療法ではPPP(少血小板血漿)を用います。血液を遠心分離機にかけ、血小板をできるだけ取り除いたもので、寒天のようなジェル状をしています。
PRP療法と比較して、止血作用が弱まるためしこりができにくい一方、組織を修復する機能も弱まるためバストアップ効果が劣るのが特徴です。
気になる費用ですが、PRP療法は自由診療です。1部位で約16万円(税込)、4部位であれは約50万円(税込)になります。参考にしてみてください。
施術部位・注入量・クリニックによって費用には差がありますので、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
PRP注入療法の原理
PRPの組織の修復を促す機能を成長因子と呼びます。上記で解説したようにPRPの成長因子を用いる治療は、再生医療的なアプローチ方法です。
ではこのアプローチを取り入れた美容医療であるPRP注入療法は、具体的にはどのような原理で豊胸を目指すのでしょうか。
PRPは体内でさまざまな成長因子を放出します。なかでも血液豊胸に関わる成長因子は以下の2つです。
- PDGF(Platelet derived growth factor)
- FGF(Fibroblast growth factor)
細胞増殖・血管の新生と修復・コラーゲン産生を促すPDGFは、同時にFGFを刺激する役割を持ちます。バストアップに直接働きかけるのはこのFGFです。FGFが以下のような体内の働きを促すため、バストアップを叶えられるのです。
- 組織を修復
- コラーゲン産生
- ヒアルロン酸産生
これらPRPの作用によって身体にもたらされる効果と、バストアップの関係について以下で解説していきます。
組織を修復
PRPの成長因子は、身体の傷んだ組織を修復するために作用します。具体的には、関節・靭帯・肌・骨などさまざまな部位に作用することがわかっています。
特にどの組織を修復することがバストアップにつながっているのでしょうか。バストは以下のような組織によって構成されています。
- 大胸筋
- クーパー靭帯
- 乳腺
- 脂肪組織
- 乳管群
- 乳頭
- 皮膚
バストの90%は脂肪組織で構成されています。PRPは特にこの脂肪組織に作用・修復し、バストアップを叶えてくれるのです。
コラーゲン産生
PRPの作用で産生量が増えるコラーゲンは、バストの表面・内部の両方に効果をもたらします。
バスト表面にはハリ・ツヤをもたらします。コラーゲンが肌の状態をよくするためです。直接サイズアップにはつながりませんが、肌がピンと張るため形が整い印象がよくなります。
またバスト内部においてはクーパー靭帯を補強する効果が期待できます。
クーパー靭帯とはバストと大胸筋をつなぐ束状の組織です。生活における刺激・加齢・授乳などによりクーパー靭帯が切れたり伸びたりすることで、バストは下垂してしまいます。
クーパー靭帯はコラーゲンで構成されています。そのため体内のコラーゲンを増やし、補強することでバストアップを見込めるのです。
ヒアルロン酸産生
ヒアルロン酸は人間の体内に存在している物質が由来となっています。ヒアルロン酸はコラーゲンの組織の間に存在し、その強い粘り気・弾性で細胞同士をつなぐ役割を担っています。
非常に高い保水力が特徴で、ヒアルロン酸自体の600倍の水分を保持することが可能です。そのためPRPの作用でヒアルロン酸がバスト内に多く産生されると、みずみずしく豊かなバストになるのです。
PRP注入療法の効果について
PRP注入療法では約200~400mlの血液を採血し、1カップ程度バストアップするのが一般的です。一度の採血量に限界があるためです。
それ以上のバストアップを希望する場合は体型・貧血の有無などから、採血が可能かを総合的に判断する必要があります。
豊胸の効果についてはサイズの変化はもちろん、安全性を重視しながらバストアップが叶うのか・どの程度の期間持続するのかも押さえておきたいポイントです。以下で詳しく解説します。
安全性
血液豊胸は安全性に優れています。その理由は自身の血液を利用するためです。
シリコンバッグなどの人工物・完全には体内に吸収されないヒアルロン酸などを体内に入れる場合は、体にアレルギーなどの拒否反応が出るリスクがあります。
特にシリコンバッグに関しては、術後に拒否反法がなく馴染んだとしても破裂のリスクがあるため定期的なメンテナンスも必要になります。
しかし自身の血液を加工したものをバストに入れるならば、拒否反応が出る可能性をかなり低くまで抑えられ、リスク管理のメンテナンスも必要ありません。
この特徴からPRP注入療法は、本格的な豊胸術には抵抗がある人にも受け入れやすい、安全性の高い美容医療となっています。
効果の持続性
PRPを用いた豊胸の持続期間は約3〜4年とされています。PPPを用いた豊胸の持続時間が約数ヶ月とされているため、血液豊胸のなかでは持続性のある施術です。
ただしシリコンバッグ・脂肪注入での豊胸はメンテナンスし続ければ、基本的に半永久的に効果が持続します。
効果が欲しい時期・メンテナンスに通う労力など、総合的に考えて「自分にはどの程度の持続性が必要か」判断して術式を選びましょう。
効果が現れるまでの時間
PRP注入療法でのバストアップは効果の現れ方が特殊です。シリコンバッグ・脂肪注入などの施術では、ダウンタイムが終わればすぐに効果が感じられます。
対してPRP注入療法では自身の組織再生能力を利用するため、再生完了までかかる時間は約2ヶ月です。
そこからさらに6ヶ月〜1年程の期間をかけて徐々に効果が高まり続けます。最高到達点に達すると安定し、約3〜4年効果が持続します。
つまりPRP注入療法の効果が完全に現れるまでには時間がかかるのです。ただし施術直後も皮下注射する分バストが盛り上がるため、一定のバストアップ効果はすぐ現れます。
ダウンタイム
PRP注入療法のダウンタイムは長くても1~2週間程度です。数ある豊胸術のなかでもかなり短い期間です。
これはPRP注入療法での施術が皮下注射のみであることに起因しています。
最初の2〜3日は注入部の痛み・赤み・腫れが生じます。1~2週間程度は内出血が生じるケースもあるため注意です。また1ヶ月間は注入部位の強い圧迫は避けましょう。
しかし当日からシャワーを浴びることもでき、ダウンタイム中でも痛みをほぼ感じないケースがほとんどです。
一方でシリコンバッグ挿入手術のダウンタイムは、長くきついことで知られています。筋肉痛のような痛みが2~4週間程度も続き、最初の1週間は痛みのあまりベッドから起き上がれなくなるといいます。
術後長期間に渡って身体を休める環境を準備できるでしょうか?豊胸手術を受けたことを知られたくない人にとっては、長期の時間拘束はバレるリスクにもなるでしょう。
豊胸手術のために十分な期間を取れない人・痛みに抵抗がある人には、シリコンバッグの挿入よりもPRP注入療法をおすすめします。
血液豊胸のメリット
血液豊胸のメリットは身体的負担が少ない点にあります。
自身の血液を使うためアレルギー反応を起こしにくく、皮下注射でバストに注入するだけなので身体にも注入痕しか残りません。
そのお陰でダウンタイムも非常に楽になります。豊胸手術にともなう身体的負担・拘束時間がネックになっている人にはうれしいポイントでしょう。
また周囲にバレにくいメリットもあります。ダウンタイムが短いため、豊胸手術を受けたこと自体が周囲にバレにくいのです。
シリコンバッグのようにレントゲン写真に写ることもありません。さらに最大1カップ程度までなだらかにバストアップ効果が出るため、自然な身体変化にも見えバレない可能性を高めます。
血液豊胸のリスク
安全性の高さが評価される血液豊胸ですが、知っておくべきリスクもあります。
まず気を付けたいのはしこりです。血液内の血小板には凝固作用があるため、しこりができやすいのです。特に血小板を多く含んだ血漿を使うPRP療法では、しこりができるリスクが高まります。
自身の体内組織を使った豊胸によるしこりは、ほとんどが痛みをともわない良性のしこりで体に害を及ぼしません。そのまま放置しておいても身体的には問題ありません。
痛みをともなう悪性のしこりは乳がんに起因します。こちらに関しては早期に治療を開始しなければなりません。
しかし良性のしこりでも見た目が悪くなるなど、しこりを取り除かなければならないケースもあります。その場合はしこりを溶かしたり取り除いたりする手術が必要になります。
また効果に個人差がある点もデメリットです。血液豊胸では成長因子が組織に働きかける力を使って豊胸を目指します。そのためもともとバストアップしにくい体質であれば効果が出にくいのです。
体質的に太りにくい痩せ型タイプの人にはバストアップ効果が出にくい傾向にあります。逆に太りやすい体質の人は効果を実感しやすいといいます。
脂肪注入での豊胸手術による合併症
ここまで血液豊胸のひとつであるPRP注入療法の効果・メリット・デメリットを解説してきました。
以下では比較対象として、血液豊胸と同じく体内組織を使って豊胸する脂肪注入による豊胸手術について解説していきます。
脂肪注入ではどのような合併症に気をつければよいのでしょうか。
傷あと
脂肪注入では2種類の傷あとができます。ひとつは太もも・腹部から脂肪を採取した傷あとです。皮膚を5mm程度切開します。
もうひとつは脂肪を注入した傷あとです。細い注射器を使った針穴が残ります。
感染
わずかな切開と注入のみで完結する脂肪注入ですが、手術である以上感染リスクは避けられません。感染すると手術した部分に細菌が入り込み膿・発熱・痛みが生じます。
血腫
切開・注入をともなう脂肪注入では、不十分な止血によって血腫と呼ばれる血溜まりが体内にできるケースがあります。
ほとんどの血腫は体内に自然に吸収されてしまいますが、血腫が長期間体内に残ってしまう場合は感染リスクから手術で取り除く必要が出てきます。
乳輪乳頭の知覚異常
バストに干渉する手術になるため、乳輪乳頭に知覚異常が出るリスクがあります。乳輪乳頭の感覚が鈍くなる可能性があるのです。
多くのケースでは術後の時間経過にともない、知覚を回復する傾向にあります。ただしその回復には個人差があるため、リスクをきちんと理解したうえで手術を受けましょう。
左右差
もともと人間の体は完全に左右対称にはできていません。豊胸術後もある程度の左右差はあるものと理解しておきましょう。
リンパ腫
バストにシリコンバッグを挿入した際、悪性リンパ腫を発症した事例が報告されています。
脂肪注入からリンパ腫が引き起こされた事例はありませんが、豊胸手術においては、どの術式を選んでも術後のリスク管理が必要です。定期的な健診を受け、バストの変化に気を配っておきましょう。
まとめ
PRP注入療法は自身の血液を加工し、バストに注入する豊胸術です。注入された血液内の血小板がバスト内の組織に働きかけ、組織修復・コラーゲン産生・ヒアルロン酸産生を促します。
この血小板の働きにより、バストが自分の組織を使ってバストアップしていくのです。自然にゆっくりとバストアップするため周りに気付かれにくい傾向にあります。
また施術が皮下注射のみで、自身の血液を注入するため身体的負担が少なくダウンタイムも短い点がメリットです。
一方でしこりができやすく、効果に個人差が出やすい点がデメリットです。
自分のバストが自分の力で育っているような感覚は、ほかの豊胸術では味わえない感覚でしょう。
短い時間と少ない身体的負担で豊胸したい人・自然なバストアップを叶えたい人はぜひPRP注入療法を検討してください。
参考文献