ヒアルロン酸は関節・眼球・皮膚など人の体に広く存在するムコ多糖類の一種で、保水性に優れ、肌のハリを保つ働きがあります。
このヒアルロン酸は年齢とともに減少するため、肌の弾力が衰えてゴルゴラインのようなしわやたるみが目立つ老け顔になってしまうのです。
そこで、美容外科のさまざまな場面でヒアルロン酸を皮下に注入して内側から肌を持ち上げ、しわやたるみを改善する治療法が用いられています。
ヒアルロン酸は人体にもともと存在する成分のため親和性が高く、アレルギー反応を起こしにくい成分です。施術にかかる時間やダウンタイムが短く、効果を実感しやすいことでも注目されています。
ここでは、ゴルゴラインができてしまう原因やヒアルロン酸注入による効果、おすすめの注入部位などについて紹介します。
記事の後半では、ヒアルロン酸注入の注意点や効果が出にくいケースの解説をしますので、ゴルゴラインによる老け顔が気になる方はぜひ参考にしてください。
ゴルゴラインの原因やヒアルロン酸注入による改善
- ゴルゴラインとはどのようなものですか?
- 目頭から頬の中央に向かって斜め下方に入る線をゴルゴラインといいます。この線は靭帯という組織で誰にもあるものですが、加齢によって目のまわりの眼輪筋や頬の筋肉(下眼瞼筋・上唇挙筋・小頬骨筋・口角挙筋)が衰えてくると目立つようになるものです。
ほうれい線やマリオネットラインのように誰にでもできるわけではなく、頬骨が平べったい骨格や頬の脂肪が少ない場合にゴルゴラインができやすくなります。顔の中心部にゴルゴラインができると暗く疲れた印象になり、実際の年齢より老けて見えるため気になる部分です。
- ゴルゴラインができてしまう原因を教えてください
- ゴルゴラインができてしまう主な原因は、肌のハリ・弾力の低下と表情筋の衰えです。加齢による肌の老化や紫外線・乾燥等の外的ダメージ、ストレスなどで肌内部のコラーゲンやヒアルロン酸等が減少すると、肌の弾力が失われてゴルゴラインが目立つようになります。
また、普段から表情を動かさずにいると靭帯を支える顔の表情筋の機能が低下して脂肪が垂れ下がり、ゴルゴラインができやすくなります。そのほか、誤ったスキンケアや睡眠・栄養不足など不規則な生活による肌の老化もゴルゴラインが目立つようになる原因の一つです。
- ヒアルロン酸注入でゴルゴラインを改善することはできますか?
- ゴルゴラインを改善する方法として、ヒアルロン酸注入は特に広く普及している治療法です。国の研究事業でもヒアルロン酸の注入により顔のしわ・たるみの改善が期待でき、強く推奨するとの報告があります。メスを使わない治療のため施術時間が10分程度で済むことや、腫れ・むくみが少ないのが特徴です。
治療としては、靭帯に沿ってできた溝にヒアルロン酸を注入してへこんだ部分を浅くします。しわが深い場合は、自然な仕上がりになるよう少ない量から慎重に薬剤を注入していきます。ヒアルロン酸は半年から2年ほどで体内に吸収されますが、効果が持続する期間は種類によって異なるので使用する薬剤について事前に確認しておきましょう。
- 若いころからのゴルゴラインもヒアルロン酸注入で改善できますか?
- ゴルゴラインは加齢によって生じるだけでなく、骨格や顔の脂肪量などの関係で生まれつきできやすい人がいます。若いころからのゴルゴラインは強固な靭帯に引っ張りこまれて年齢とともにくぼみが深くなり、完全に消すことは困難です。
くぼみ部分に大量のヒアルロン酸を注入すると膨らみ過ぎて不自然に見えることもあるため、注入する部位や深さを慎重に見極める必要があります。目元や頬の皮膚は薄く、ゴルゴラインへのヒアルロン酸注入は繊細で確かな技術が求められるため、信頼できる医師とよく相談したうえで施術を受けることが大切です。
- ゴルゴライン改善にはヒアルロン酸注入以外の治療方法もありますか?
- ヒアルロン酸注入以外の治療方法としては、本人の身体から採取した脂肪を注入してゴルゴラインを改善する方法があります。副作用の心配がほとんどなく、体内で分解・吸収されないので繰り返しの注入は不要です。
ただし、腫れがひくまで数週間かかったり脂肪を採取した部分にもダウンタイムを要したり、ヒアルロン酸注入にはないリスクや注意点があります。また、ほかの方法との組み合わせでより一層の効果が期待できることもあるため、ゴルゴラインの原因や肌の状態等を考慮して次のような方法の併用を考えてもよいでしょう。- 本人の身体から採取した脂肪注入
- 肌をひきしめる高周波・超音波の照射
- PRP(多血小板血漿)やFGF(線維芽細胞増殖因子)を注入する再生医療
- 表情筋のストレッチ・マッサージ
- レチノールやヒト幹細胞培養上清液を用いたスキンケア
- 睡眠・食事・姿勢など生活習慣の見直し
ヒアルロン酸注入で老け顔を改善できる?
- ヒアルロン酸注入はほうれい線やマリオネットラインにも効果がありますか?
- ヒアルロン酸注入は、ゴルゴラインだけでなくほうれい線やマリオネットラインを目立たなくする効果もある治療法です。
例えばほうれい線を改善するには、しわの深さに合わせて適度な硬さのヒアルロン酸を選び、ボリュームの足りない部分に注入して皮膚の内側から肌を持ち上げます。口元から顎にかけてできるマリオネットラインの溝も、ヒアルロン酸注入によるふくらみと保水力で改善することが期待できます。
- 老け顔を改善するためにおすすめのヒアルロン酸注入の部位は?
- 老け顔を改善するには加齢に伴って組織が減退した部分にヒアルロン酸を注入し、顔の凹凸をスムーズに調整するのが効果的です。注入する部位や状態によってヒアルロン酸製剤の硬さを使い分け、しわ・表情じわ・くぼみ・たるみ・クマ・顔のボリュームなど全体のバランスを整えます。
さまざまな部位でヒアルロン酸注入の効果を期待できるので、カウンセリングで気になる部分について相談しましょう。おすすめのヒアルロン酸注入の部位を紹介します。- ゴルゴライン
- ほうれい線
- マリオネットライン
- 額
- 目の下
- 目尻
- 涙袋
- 眉間
- 鼻
- 顎
- 唇
ヒアルロン酸注入の注意点や効果が出にくいケース
- ヒアルロン酸注入の注意点を教えてください
- ヒアルロン酸注入に限らず美容外科の治療を受ける際には、使用する薬剤や施術方法、ほかの選択肢などについて施術前によく確認することが大切です。ヒアルロン酸注入はダウンタイムが短く注入直後から効果が分かりやすい施術ですが、知っておきたい注意点があります。
治療後の顔のイメージやリスクについて予めしっかり確認するとともに、合併症が起きた場合の対応方法等についても十分納得したうえで施術を受けるようにしましょう。ヒアルロン酸注入には次のような注意点があります。- 内出血
- 腫れ・むくみ
- チンダル現象(ヒアルロン酸が肌から透ける)
- 膨らみ・しこり
- 視力障害・皮膚壊死
- 仕上りがイメージと異なる
- 効果が持続しない
- ゴルゴラインへのヒアルロン酸注入の効果が出にくいのはどのようなケースですか?
- ヒアルロン酸注入は安全性が高く効果がわかりやすいのが特徴ですが、なかには治療が難しくヒアルロン酸だけでは十分な効果が出にくいケースもあります。例えば、幼少期から存在するゴルゴラインは骨格や脂肪のつき方によるもので、完全に消すことが困難な場合もあるため丁寧なカウンセリングが欠かせません。
また、ゴルゴラインと肝斑など頬のシミが重なっているケースでは、シミが残っていることでゴルゴラインが改善していないように見えてしまいます。ゴルゴラインと目の下の脂肪によるたるみがつながっているような場合は、ヒアルロン酸注入だけでは効果がわかりにくいものです。目の下の皮膚が大きくたるんでいるときは余った皮膚の処置についても併せて検討する必要があります。
- ほかの施術と組み合わせることもありますか?
- ヒアルロン酸注入の効果が出にくいケースなどでは、ほかの施術を組み合わせて行うことでより満足度の高い仕上がりが期待できます。ゴルゴラインとシミが重なって同化している場合は、レーザー・光治療やビタミンC・ハイドロキノン・トラネキサム酸の内服などによるシミ改善治療との併用が効果的です。
加齢とともに眼窩脂肪がずり落ちて目の下にふくらみがあるときは、ハムラー法等で脂肪を移動させたり取り除いたりする施術を組み合わせます。目の下のたるみが強くてゴルゴラインが深くなっているような場合は、ヒアルロン酸注入だけでなく余った皮膚を切除する筋皮弁法の治療を併用するとよいでしょう。
編集部まとめ
ヒアルロン酸注入は、メスを使わずに顔の凹凸を滑らかに整えるエイジングケア施術です。人の体内に存在するヒアルロン酸を気になる部分に注入し、しわの改善や輪郭形成を行います。
ダウンタイムが短くアレルギー反応が起こりにくいことに加え、すぐに効果を実感できるのがメリットです。
一方で、注入されたヒアルロン酸は体内で分解・吸収されるため時間とともに効果がなくなっていきます。内出血や腫れ、むくみが生じる可能性もゼロではありません。
また、ゴルゴラインはヒアルロン酸注入による効果が期待できる部位ですが、他の施術と組み合わせることで成果をより実感できるケースもあります。
疑問や不安に思うことについては、施術の前にカウンセリングでしっかり確認することが大切です。十分な説明を受けて気になるゴルゴラインの悩みを解消し、明るく表情豊かな毎日を過ごしてください。
参考文献