「婦人科形成」という言葉自体、それほど馴染みがあるものではありません。さらに「会陰部贅皮切除術」となると、一体何をするのか見当もつかないでしょう。
しかし、女性にとってデリケートゾーンの悩みは深刻なものです。誰にでも相談できるようなものではないため、悩みを1人で抱えてしまいがちだからです。
デリケートゾーンの悩み解消につながる会陰部贅皮切除術について簡単に説明するほか、婦人科形成がどのようなものかについても触れていきます。
婦人科形成の会陰部贅皮切除術とは?
- 婦人科形成とは?
- 婦人科形成は形成外科のなかでも、女性器の外観や機能を整えることに特化したものです。新しい診療科で、注目され始めたのは21世紀に入ってからです。
「女性器の形状がおかしいのではないか」という悩みを抱える女性は想像以上にいるのですが、そうした悩みは長い間「表に出してはいけないもの」とされてきました。現在でも決して表に出しやすいとはいえない女性器の悩みに対し、外科的アプローチでの対処を行うものだと考えてよいでしょう。
近年、医療分野において注目されているのが「ウェルネス」という概念です。健康を身体的なものだけではなく、メンタルを含めて「輝くようにいきいきしている状態」だと考えるものです。
婦人科形成は、女性のウェルネスのための診療科といえます。表に出しにくい部位の悩みを解決することで「輝くようにいきいきしている」人生の助けになるからです。
- 会陰とはどこの部位ですか?
- 女性の場合、会陰は肛門と膣口の間です。赤ちゃんが膣口を通って生まれてくる自然分娩の場合、会陰部も大きく伸びることになります。このとき、会陰裂傷を負ってしまうケースがあるのです。
これを避けるため、分娩時に医師が会陰切開を行うこともあります。裂傷・切開どちらのケースでも、出産後には会陰部の縫合が必要になってきます。
いずれにしても傷跡が残り、性生活をはじめとするQOL(生活の質)に悪影響を与えることが指摘されているのです。また、自然分娩によって大きく伸びた会陰部に贅皮が生じることも問題となってきます。
- 会陰部贅皮切除術とはどのような手術ですか?
- 自然分娩などによって生じた余分な皮膚を取り除く手術です。会陰裂傷・会陰切開によって生じた傷跡を切除することも含まれます。急激なダイエットによって、会陰部に贅皮が生じるようなケースもあります。
ある意味あたり前の話ですが、会陰部は誰にでも見せるような部位ではありません。見せられるような人は特別な存在であり、機能的に問題がなくても形状の変化が気になるのは無理もないことです。
大きなコンプレックスの原因になることも考えられます。会陰部贅皮切除術は悩みの原因を解消することで、ウェルネスの向上に寄与しようという術式だといってよいでしょう。
- 会陰部贅皮切除術はどのような人におすすめですか?
- おすすめだといえるのは、経産婦です。自然分娩にともなう会陰裂傷・会陰切開を行った場合、縫合を行っても元通りになるとは限りません。
傷が治っても、形状が変わってしまうこともあります。裂傷・切開の傷跡が残ってしまうことも、コンプレックスの原因となります。出産時に会陰部の筋肉が断裂してしまったケースでは、膣のゆるみにつながることもあるのです。
手術によって贅皮や傷跡を切除して形を整え、膣の機能を回復させることでウェルネスの向上が見込めます。急激なダイエットによって会陰部に贅皮が生じてしまった人も、会陰部贅皮切除術はおすすめとなります。経産婦のような機能面での問題は考えにくいのですが、会陰部の形状にコンプレックスを抱いてしまう点では同じです。
このため、手術によって形を整えることはウェルネスの向上につながる可能性があります。
- 会陰部贅皮切除術はどこで受けられますか?
- 会陰部贅皮切除術を行うのは、基本的に婦人科形成です。医療行為自体の専門性もさることながら、施術を行う部位の関係で相談がしづらいことが背景にあります。
婦人科形成ではこうした事情を踏まえ、女性医師を多数配置しています。一般的な形成外科の男性医師による医療行為と比較し、心理的抵抗感を抑えようという狙いがあるのです。
会陰部贅皮切除術の手術方法について
- 会陰部贅皮切除術の手術方法を教えてください。
- 会陰部贅皮切除術を行う際には、局所麻酔・静脈麻酔・笑気麻酔のいずれかを使用します。贅皮は会陰部のしわに沿って切除するため、傷跡が目立ちません。
贅皮切除後の縫合は外縫い・中縫いの2種類があります。外縫いは表面同士を糸で縫合するもので、安価で時間がかからないことがメリットです。
半面、中縫いと比べ傷跡が目立ちやすいデメリットがあります。抜糸も必要です。中縫いは副皮内部から溶ける糸で縫合するもので、外縫いより傷跡が目立ちにくいメリットがあります。溶ける糸を使用するため、抜糸は不要です。
コスト・時間が外縫いよりもかかる点がデメリットです。会陰部の状態によっては、大陰唇への脂肪注入が同時に行われることもあります。
- 会陰部贅皮切除術はどのくらいの時間がかかりますか?
- 会陰部贅皮切除術に必要な時間は30分から2時間と、医療機関によってばらつきがあります。縫合方法などによって手術にかかる時間が変わってくることが理由のひとつです。
例えば傷跡を可能な限り残さないために中縫いを選択すれば、どうしても手術に時間がかかってしまいます。縫合方法に外縫いを選択すれば手術にかかる時間そのものは短縮できるといった具合です。
静脈麻酔を選択した場合には、術後に覚醒するまでの時間も必要になります。いずれにしても、手術に必要な時間については医療機関の公式サイトなどで確認するとよいでしょう。
- 会陰部贅皮切除術のダウンタイムはどのくらいですか?
- 会陰部贅皮切除術のダウンタイムは一般的には1週間程度ですが、皮下出血が認められた場合には2週間から3週間に延びることもあります。
薬は化膿防止のための抗生剤・痛み止めが処方されますが、ダウンタイムを短縮するための投薬が行われる医療機関もあります。シャワーは早ければ手術当日から可能ですが、入浴については患部の腫れが長引く危険性があるため1週間から2週間はできません。
性行為については早くても術後2週間から1ヵ月程経過してから可能となります。
会陰部贅皮切除術の費用や通院について
- 会陰部贅皮切除術の費用相場はどのくらいですか?
- 会陰部贅皮切除術は健康保険の適用外となるため、費用については医療機関によって異なっています。実際に医療機関を比較しても、10万円前後から20万円台とばらついているのです。
かかる費用は医療機関による違いもさることながら、選ぶ術式によっても変わります。抜糸が必要な外縫いと不要な中縫いを比較した場合、同じ医療機関であっても後者の方が料金は高いです。
医療機関によって料金に差があれば、安いところを選びたくなる気持ちはわかります。しかし、医療機関による技量の差も考慮に入れなければなりません。安いだけの理由で技量が高いとはいえない医療機関で手術を受け、よい結果が出なければ目も当てられません。
術後のウェルネス向上を考えるならば、安ければよいというものではないのです。
- 会陰部贅皮切除術後の通院について教えてください。
- 外縫いは抜糸のための通院が必要で、手術から1週間後をめどに診療を受けなければなりません。抜糸が不要な中縫いは、医療機関によって対応は分かれます。
通院が不要だとしているところもあれば、経過観察のために複数回の通院が必要だとしているところもあるのです。時間がないため術後に手間をかけたくない人と、デリケートな部位なので手厚くケアしてほしい人では、どちらを選ぶかで判断は異なってきます。
編集部まとめ
繰り返しますが、女性器の悩みは誰にでも打ち明けられるものではありません。それだけに、婦人科形成がウェルネス向上に果たす役割は大きいといえます。
経産婦の場合、会陰裂傷を完全に防ぐことはできません。このため、出産後のウェルネス向上において会陰部贅皮切除術は重要だと判断できます。
手術を受けるにあたっては術式自体に複数の選択肢があり、同じ医療機関であっても術式によってかかる費用は異なってきます。
経済面を考えれば料金は無視できませんが、最終的には自分にとってウェルネス向上が期待できるかを考慮して医療機関・術式を選択してください。
参考文献