ヒアルロン酸注射は整形外科だけでなく、美容外科や美容皮膚科でもよく行われている治療法です。主な目的は顔のしわや凸凹の改善ですが、鼻の成形にも効果があります。
ヒアルロン酸注射薬には種類があり、美容医療の現場では部位ごとに種類を変えて治療をしますが、実際にヒアルロン酸の種類について知っている方は少ないでしょう。
この記事では、美容医療で使われるヒアルロン酸注射薬の種類について紹介します。
部位による使い分け方・ヒアルロン酸注射のメリットやデメリット・実際に治療を受ける際の注意点なども解説するのでぜひ参考にしてください。
ヒアルロン酸注射の種類・部位別の理由
- ヒアルロン酸注射の種類はどのくらいありますか?
- ヒアルロン酸の注射剤は多くのメーカーが製造販売していますが、種類は硬さによって以下の4つに分けられています。
- 硬め
- やや硬め
- やややわらかめ
- やわらかめ
ヒアルロン酸は分子量が高いほど硬く、低いほどやわらかいのが特徴です。実際に注射をする際には、注射をする部位ごとにヒアルロン酸の硬さを選びます。
額の凸凹や鼻の形を整えるのに使われるのは「硬め」のヒアルロン酸です。ほうれい線など皮膚表面にできたしわには「やや硬め」・眉間の凸凹には「やややわらかめ」・目の下のくぼみには「やわらかめ」を使います。
注入量は施術部位や患者さんの症状によって異なりますが、顔に施術する場合は1回あたり0.2cc~2.0ccと非常に少量です。
- ヒアルロン酸注射を部位別にする理由はなんですか?
- ヒアルロン酸の種類を注射する部位ごとに変えるのは、注入する部位によって改善したい症状が異なるからです。
しわは、皮膚表面の浅い凹みを盛り上げて皮膚のボリュームを増やすと改善します。顔の皮膚は部位によって厚さが異なるので、皮膚の厚い額や頬には「やや硬め」、皮膚が薄い瞼などには「やわらかい」ヒアルロン酸を選ぶのが一般的です。
鼻の形を整えたい場合は鼻根や鼻筋に注射をしますが、ヒアルロン酸の硬さは基本的に「硬め」を選びます。やわらかいヒアルロン酸を使わないのは、きれいに形成できなかったり、せっかく形成した鼻の形が早く崩れたりしてしまうからです。
- ヒアルロン酸の効果は持続しますか?
- ヒアルロン酸注射の持続時間は、注入量やヒアルロン酸のメーカーや硬さによって異なりますが、一般的には6ヶ月から2年で体内に吸収されます。
ヒアルロン酸は人間を始め生物の体内に初めから備わっていて、1gで6リットルも水分を吸収・保持する力がある物質です。生物の体内で生成されていますが、30代を過ぎると加齢によって急激に減っていく物質でもあります。
また、ヒアルロン酸は体内で生成されたもの・注射で注入したもののどちらでも、いずれは分解して体内に吸収され、大部分が血液で肝臓に運ばれてさらに分解されるのが特徴です。肝臓で分解されたヒアルロン酸は最終的に、汗や尿と一緒に体外へ排出されます。
ヒアルロン酸注射のメリット・治療法
- ヒアルロン酸注射を行うメリット・デメリットを教えてください
- ヒアルロン酸注射にはメリットもデメリットもあります。大きなメリットは、注射器で薬液を注入するだけで、顔のリフトアップ・たるみ・凸凹・しわの改善・気になる部位の形成ができる点です。メスなどを使わないので体への負担が軽いうえ傷も残らず、施術後すぐ化粧もできます。
また、ヒアルロン酸注射は即効性があり、肌のハリや潤いも改善できるのも長所です。
デメリットとしては、注射針を刺す際の痛み・細菌感染のリスクがある・術後に注入した部位が内出血を起こすことがある・定期的な施術が必要な点が挙げられます。
ヒアルロン酸注射は、十分な技術を持つ医師に施術してもらってください。患者さんの体質によっては異物肉芽腫症を発症するおそれがあります。異物肉芽腫症は、体内の異物が分解されずにいつまでも残留してこぶのような塊が生じる病気です。治療するには、できてしまった肉芽腫と異物の両方を摘出する必要があります。
また、ヒアルロン酸注射は注射針を使うため、血管への誤注入で皮膚壊死や失明など重大な事故がまれに発生するのも事実です。
- 治療では麻酔を使用しますか?
- ヒアルロン酸注射の注入前には麻酔を使う医療機関が多いです。麻酔薬は医療用でクリーム状のものがよく使われます。ヒアルロン酸注射の前に麻酔を使うのは、施術による痛みを軽減するためです。
医療機関によってはテープ麻酔・ブロック麻酔・笑気麻酔など複数の麻酔を用意しているところもあるので、気になる方は事前に尋ねてみましょう。複数の麻酔を用意している医療機関なら、患者さんに合わせて適切な麻酔を選んでくれます。
また、痛みに敏感な方や少しでも痛みを感じずに施術したい方には、麻酔剤が入ったヒアルロン酸注射剤がおすすめです。
- 治療や通院は短期間で終わるでしょうか?
- ヒアルロン酸注射1回あたりの時間は5~10分程度です。麻酔クリームを使う場合は麻酔が効き始めるまで30分程度かかるので、長くても1時間程度と考えておきましょう。施術の通院が必要か不要かは医療機関によって異なるので、主治医に尋ねてください。
また、ヒアルロン酸注射の効果は永遠ではないので、効果を持続させるには定期的に注入をする必要があります。
再度ヒアルロン酸を注入するタイミングには個人差がありますが、1回目の追加注入は前回の施術から4ヶ月~5ヶ月後、3回目以降は1年に1回がおすすめです。
ヒアルロン酸注射の注意点・気を付けたいこと
- ヒアルロン酸注射を行う際の注意点を教えてください
- 安全性が高く、施術による患者さんの身体的負担も少ないヒアルロン酸注射ですが、施術にあたってはいくつか注意するべき点があります。施術当日は激しい運動と飲酒を控えてください。顔のマッサージも施術から2週間経ってから始めるのがおすすめです。また、以下の項目に該当する方は、ヒアルロン酸注射による施術を受けられません。
- 13歳未満の子ども
- 妊娠・授乳中
- ヒアルロン酸注射薬や麻酔薬にアレルギーがある
- グラム陽性菌由来のタンパクにアレルギーがある
- 免疫が低下している
- 慢性の感染症がある
- 施術部位に感染がある
- 真性ケロイド体質がある
- 出血しやすい体質
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる
子どもがヒアルロン酸注射を希望する場合は、医師によく相談してください。未成年が施術・施術に関するカウンセリングを受ける際には保護者の同伴と同意書が必要です。
また、ヒアルロン酸注射は繰り返し打てますが、薬剤の量が多かったり短いスパンで注入したりすると副作用が出るリスクが上がります。
- ヒアルロン酸注射は自費診療になりますか?
- 美容が目的でヒアルロン酸注射の施術を受ける場合は保険適用されないので、自費診療になります。
料金は医療機関・施術部位・注射をした回数によって異なるので、あらかじめ医療機関のサイトで調べたり、主治医に尋ねたりしておきましょう。
ヒアルロン酸注射薬自体の料金は施術方法や施術部位によって異なりますが、1ccあたり8,960円~128,000円(税込)と考えてください。
- 安全なヒアルロン注射が打てるクリニックの選び方はありますか?
- ヒアルロン酸注射による施術を安全に受けるには、以下に挙げる4点がそろっている医療機関を選びましょう。
- 美容医療の専門医師が在籍している
- カウンセリングを丁寧に行う
- 使用する薬剤や費用に関してきちんと説明がある
- アフターフォローが手厚い
上記4点のなかで大切なのはカウンセリングです。美容医療は不安を感じる患者さんが多いので、治療前のカウンセリングで丁寧に話を聞いて答えてくれる医師であるかどうかをよく見ておきましょう。
また、ヒアルロン酸注射に限らず、美容医療は医師免許を持つ方であれば誰でも行えます。後遺症などのリスクを下げるには、美容医療を専門にしている医師に施術を依頼するようにしてください。
近年は医師のプロフィールや治療実績をホームページで紹介している医療機関も増えています。
ヒアルロン酸注射については、使用する薬剤や費用についても心配です。薬剤や費用について明確で、説明もきちんとしてくれるクリニックを選べば、患者さんの予算内で大きな効果を得られる治療を受けられるでしょう。
- ボトックス注射との違いは何ですか?
- ヒアルロン酸注射は、生物の体内にもあるヒアルロン酸を皮膚の充填剤として注入し、皮膚のハリを回復させる治療法です。主に、ほうれい線などのしわや顔の凸凹などを改善するのに使います。
対して、ボトックス注射はボツリヌス菌が持つ神経毒を筋肉注射し、筋肉の緊張を緩めてしわやたるみを改善する治療法です。表情の変化で生じるしわに効果が高いので、笑いじわや眉間のしわによく使われます。
近年はより高い効果を得る目的で、ヒアルロン酸注射とボトックス注射を併用する方法もあるので、気になる方は医療機関で相談してみてください。
編集部まとめ
ヒアルロン酸注射は、薬液を気になる部位に注射器で少量注入するだけで終わる安全性が高い治療法です。
しかし、体質によっては副作用が出たり、まれに治療による事故で健康を害したりするケースがあります。
また、ヒアルロン酸注射は自費診療であるうえ、きれいな状態を保つには定期的な接種が必要です。治療はどうしても高額になるので、予算をあらかじめ決めておきましょう。
医療機関は美容医療の専門医師がいるところを選んでください。アフターサービスまで丁寧に行うところなら、仕上がりがきれいで術後も安心して過ごせるでしょう。
参考文献