デリケートゾーンのお悩みは家族や友達にも相談しにくいため、一人で悩んでいるという方が多いかもしれません。また、顔のように日常的に目につく場所ではないため、何か違和感を覚えていても、その状態がおかしいのか、それとも考えすぎなのか判別できないことも多々あるのではないでしょうか。そこでこの記事では、女性器の一部である小陰唇について、その基本的な特徴や、肥大している場合の原因や治療法について解説します。ぜひ参考になさってください。
小陰唇について
まずは、小陰唇の役割や一般的な大きさ、肥大症状について説明します。
小陰唇の役割
女性の尿道口と膣口の両脇にあるひだ状の薄い肉びらのことを小陰唇といいます。尿道や膣口を守る役割があり、男性の場合は陰茎の皮膚がその役割を担っています。小陰唇の色が黒ずんでいる場合、その色を性交渉の多さなどが原因だと気にする女性の方もいますが、これは医学的に根拠があるわけではありません。実際には、下着などとの摩擦によるメラニン色素の生成、ホルモンバランスの乱れ、遺伝的要因、加齢や不規則な生活習慣などが影響すると考えられています。
小陰唇の一般的な大きさ
成長に伴い、小陰唇のサイズは大きくなっていきます。身長などと同様に小陰唇のサイズにも個人差があり、小さい方もいれば、生殖器を保護している皮膚を指す「大陰唇」からはみ出るくらい大きい方もいます。しかし、周りの女性と比べることはむずかしいため、「自分の小陰唇のサイズは大きすぎるのではないか」「ふつうはどれくらいの大きさなんだろう」と悩んでしまう方も少なくないのではないでしょうか。そのような場合の判断基準としては、平均的なサイズである、縦4~5cm、幅1~1.5cmを目安にしてみてください。ただし、前述したように小陰唇のサイズには個人差があるため、この平均的なサイズよりも小さい、または大きいという場合でも、それによるトラブルが起こっていないのであれば気にする必要はありません。
小陰唇の肥大とは
前述した平均的なサイズよりも明らかに小陰唇が大きい場合には、小陰唇肥大の可能性があります。小陰唇肥大は、その名の通り小陰唇が肥大化していることで、さまざまな問題が起こってしまっている状態のことです。小陰唇肥大になっているかどうかは、前述したサイズを測る方法以外でも確認することができます。その方法としては、まず左右の小陰唇をくっつけるように指でつまみ、軽く引っ張ります。その後手を離し、左右の小陰唇が元の位置に戻るかどうかを確認します。このとき、左右の小陰唇が元の位置に戻るように離れれば、肥大化の心配はありません。肥大化している場合は、指を離しても左右の小陰唇がくっついた状態のままになっています。
小陰唇肥大の原因
次に、小陰唇肥大になってしまう原因を説明します。
先天的・遺伝的なもの
小陰唇肥大の原因として一番多いのは、先天的・遺伝的要因です。ホルモンバランスなどに乱れがない場合には、先天的・遺伝的要因で小陰唇が肥大していると考えていいでしょう。病的な理由で大きくなっているわけではないということになりますが、肥大化によって生活に支障が出ている場合には手術で小さくして問題を解決することになります。
ホルモンバランスの変化
先天的・遺伝的要因に次ぐ小陰唇肥大の原因は、ホルモンバランスの変化です。女性の場合、思春期以降はホルモンバランスが変化することが多く、特に妊娠や出産の際には一時的にホルモンバランスが大きく乱れます。その影響で、小陰唇が大きくなったり、垂れてしまったりすることがあります。また、ホルモンバランスの変化ではありませんが、出産が原因で小陰唇が伸びたり、会陰切開後の縫合で大きくなったり形が変化したりすることもあります。
小陰唇の老化
身体の老化に伴って小陰唇も老化することで、小陰唇肥大が気になるようになる場合もあります。これは、実際に小陰唇が大きくなるというよりは、そのほかの変化により「大きく見えるようになる」ことが原因です。例えば、加齢により肌はハリを失い、たるみが感じられるようになりますが、これが小陰唇に起こった場合には垂れて大きくなったように感じます。また、年をとるにつれて大陰唇の肉が痩せたことで、相対的に小陰唇が肥大して見えるようになることもあります。
疾患
小陰唇肥大の原因として最後に説明するのは、病気による肥大についてです。例えば、女性器周辺の皮膚疾患である象皮症では、皮膚が厚みや硬さを増し、ひだ状になる症状が現れます。その結果、皮膚の柔軟性が失われて組織が硬化する「線維化」や皮膚の肥大化が起こり、小陰唇肥大につながります。また、アトピー性皮膚炎・衣服や生理用品との摩擦などが原因でかゆみや腫れが頻繁に起こり、腫れて肥大化している状態のまま戻らなくなってしまうということもあります。さらに、身体の成長過程において小陰唇に外傷を負ったことで、小陰唇が裂け、いびつな形で大きく成長してしまうというのもめずらしくありません。そのほかにも陰部リンパ浮腫による肥大や、潰瘍や腫瘍により大きく見えるようになっている状態が、疾患による小陰唇肥大の原因として考えられます。
小陰唇肥大のリスクやトラブル
小陰唇の一般的な大きさを解説する際に、多少大きくてもトラブルが起きていないのであれば気にする必要はないと説明しました。では、小陰唇肥大が原因で起こるトラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
清潔さを保てない
小陰唇肥大のトラブルとしてまず挙げられるのは、デリケートゾーンの清潔さを保ちにくくなることです。そもそもデリケートゾーンは排尿を行うことからも分かる通り、汚れがたまりやすい箇所です。小陰唇が大きい場合、大陰唇との間の溝が大きくなることで、その部分に尿や垢、分泌物などがたまりやすく、トイレットペーパーできれいにふき取ることもむずかしくなるため、衛生環境を維持しにくくなります。それに伴い、においやかゆみが発生しやすくなるという悪影響もあります。
痛みや違和感、巻き込み
また、小陰唇が大きいことで痛みや違和感、巻き込みが生じることもあります。これは、大陰唇から小陰唇がはみ出ていることで、下着などと擦れたり、自転車に乗った際などにあたったりして、痛みや違和感につながるためです。また、大きくはみ出ていると下着やズボンなどへの巻き込みが起きて、炎症やかゆみが出てきてしまう場合もあります。このような炎症が、さらなる小陰唇肥大につながる場合もあるため、できるだけ早めに対処することが必要です。
排尿がしづらい
小陰唇が肥大していると、排尿の際に尿がまっすぐ出ず、飛び散ったり曲がったりしてしまうことがあります。また、そのことが原因でデリケートゾーンに尿が残り、においの原因になってしまうこともあります。体勢を工夫するなどして改善させることもできますが、根本的な解決方法は手術で小陰唇を縮小化させることです。
黒ずみが気になる
小陰唇の黒ずみの主な原因は、下着などとの摩擦によるメラニン色素の生成だと説明しましたが、小陰唇肥大化によって摩擦を受ける範囲が大きくなると、黒ずみが目立つようになったり、黒ずみの範囲が広がったりすることがあります。これは、排尿トラブルや痛みのような直接的な影響を与えるトラブルではありませんが、精神的なストレスとなります。そのため、小陰唇を縮小させる手術を希望する方の中には、黒ずみによる見た目の悪さを解消したいと考えている方が少なくありません。
婦人科形成の小陰唇縮小手術
小陰唇肥大は、衛生トラブルや排尿トラブル、痛みや見た目の問題につながるということを説明しましたが、ではその問題を解消するために行う小陰唇縮小手術とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、手術の概要や流れ、費用やリスクなどについて説明します。
小陰唇縮小手術とは
小陰唇縮小手術は、小陰唇が大きい、または左右差があるなど形がいびつな場合に行う手術です。麻酔をかけ、メスで不要な部分を切除していくことで、大きさや形を調整します。切除後は目立たないように縫合をすることで、見た目の問題や肥大化によるトラブルを解消します。
小陰唇縮小術の流れ
小陰唇縮小手術の基本的な流れとして、まずは希望とする小陰唇のデザインを医師と話し合います。平均的なサイズや自然な形については分からない方も多いため、医師から提案を行い、気になる点や要望がないかを確認していくという流れが一般的です。施術の際は、事前に麻酔をしたうえで切除を開始します。話し合ったデザインに基づき、できるだけ自然になるように切除し、切除後は細い糸で傷跡が目立たないように縫い合わせていきます。その後、切開部分を軟こうやガーゼなどで保護したら、施術は完了です。その後の通院では、抜糸の必要がある術式であれば抜糸を行い、抜糸が必要ない場合は経過観察をします。基本的に入院の必要はなく、痛みや腫れといったダウンタイムは長くても一週間ほどです。
小陰唇縮小術の費用
小陰唇縮小手術は、保険適用にはなっていないためクリニックごとに料金が異なります。一般的には、施術代として約30万円、麻酔代として約10万円の合計40万円ほどが小陰唇縮小手術の目安です。また、医療機関によってはモニター価格を設定している場合などもありますが、女性器の一部である小陰唇は身体の中で大切な役割を担っています。安さだけで医療機関を選ぶのではなく、施術からアフターフォローまでをしっかりと対応してくれる信頼できる医療機関を選ぶことが大切です。
小陰唇縮小術後に気をつけるべきこと
小陰唇縮小手術を受けた後は、傷口からの感染や出血を抑えるために、いくつか気をつけるべきことがあります。まず、手術後一週間ほどは、湯船につかっての入浴ができません。これは、お湯につかることで出血や感染のリスクが高まるからです。また、術後一週間から二週間ほどは、激しい運動も控える必要があります。そして、性交渉に関しても一定期間控える必要があります。控える期間は、一週間から一カ月ほどと、医療機関の方針や術式によって異なります。パートナーがいる場合には、事前診察の段階でそのような注意事項を確認しておくことで、無用なトラブルを減らすことができるでしょう。
小陰唇縮小術のリスク
小陰唇縮小手術にはリスクもあるため、そのような点も把握したうえで手術を受けるかどうかを判断することが大切です。代表的なリスクとしては、手術によって形が不ぞろいになってしまったり、いびつになってしまったりすることがあることです。そのような場合、再手術が必要になることもありますので、医療機関選びはとても重要です。また、形に問題がなかったとしても、医師と患者さんの認識の相違などから、仕上がりに不満を覚えるケースもあります。女性器について話すことに抵抗がある方も多いかもしれませんが、そのようなケースを避けるためには、デザインを決める段階でしっかりと認識をすり合わせておくことが大切です。また、手術でできた傷から感染症にかかる場合があることも、リスクとして挙げられます。手術後は一定期間入浴を避ける、丁寧に洗うといった医師の指示に従うことはもちろん、不安を感じた場合はできるだけ早めに手術を受けた医療機関に相談をしましょう。そして、小陰唇の術後のデザインによっては、排尿トラブルが起きることもあります。いびつな形だったり、サイズが小さすぎたりする場合に起きやすいトラブルですので、小陰唇縮小手術の経験が豊富な医療機関を選ぶことで回避しやすくなります。
小陰唇縮小術とよく併せて受けられる副皮切除術について
最後に、小陰唇縮小手術と一緒に行われることが多い、副皮切除術について説明します。
副皮とは
副皮は、小陰唇と大陰唇の間にある、ひだ状の皮膚のことです。ひだが二重、三重になっている人や、片側だけある人、まったくない人もいるなど、個人差が大きいという特徴があります。この副皮も小陰唇と同様にトラブルが起きていなければ手術の必要はありません。しかし、ひだの間に汚れがたまってしまったり、それが原因でにおいが発生したりすることもあります。そのような場合は、副皮切除術が検討されます。
副皮切除術について
副皮切除術は、メスを使って余分なひだを切除する治療法です。術後は痛みや少量の出血、内出血などが見られることがありますが、術中は麻酔により痛みが抑えられています。また、医療機関によっては術後の通院は不要な場合もあります。
まとめ
小陰唇肥大と小陰唇縮小手術について説明しましたが参考になったでしょうか。女性器の悩みはデリケートであり、手術で何かトラブルが起こった場合は、その後の生活にも大きく影響します。小陰唇に関して問題を抱えている方は、できる限り複数の医療機関でカウンセリングを受け、信頼できる医師を見つけていただければと思います。
参考文献