肌にハリや弾力を与えてくれるヒアルロン酸は、体内に存在する大切な成分のひとつです。しかし、ヒアルロン酸は年齢とともに減少するので、外部から補わなければなりません。ヒアルロン酸の摂取方法には、注射、外用剤、内服剤による摂取方法があり、それぞれ効果も異なるので、個々の状態や目的に合わせて摂取方法を選ぶことが大切です。
この記事では、ヒアルロン酸の効果や摂取方法ごとの効果、効果を高める方法などについて詳しく解説します。
ヒアルロン酸について
肌や目の潤い、スムーズな関節の動きなど、さまざまな組織で重要な役割を果たすヒアルロン酸は、私たちの体に必要不可欠です。ここでは、ヒアルロン酸の概要からヒアルロン酸の種類、ヒアルロン酸の役割、ヒアルロン酸の生成、ヒアルロン酸が減少することによる影響について詳しく解説します。まずは、ヒアルロン酸についての正しい知識を身につけましょう。
ヒアルロン酸とは
ヒアルロン酸は、私たちの体内に存在する粘性のある物質で、目、皮膚、関節などあらゆる組織に存在し、重要な働きをしています。ヒアルロン酸の主な特徴は高い保水力で、1gで最大約6リットルの水分を保持することが可能です。この特性により、ヒアルロン酸は皮膚の弾力性や潤いを維持し、関節の潤滑剤としても機能しています。しかし、体内のヒアルロン酸は30代から急激に減少し、40代で50%、60代で25%にまで減少するので、意識的に補うことが大切です。個々の状態や目的に合わせて、ヒアルロン酸を含んだ化粧品やサプリメント、食品などからヒアルロン酸を補うと良いでしょう。
ヒアルロン酸の種類
ヒアルロン酸には、「高分子ヒアルロン酸」と「低分子ヒアルロン酸」と呼ばれる2つの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
・高分子ヒアルロン酸
高分子ヒアルロン酸は、フカヒレ、オクラ、納豆などの食品に自然に含まれるもので、粒子が大きいのが特徴です。高い保水力があり、体内外から取り入れることでお肌の細胞の分化を促進し、バリア機能を高めます。ただし、熱に弱いため、調理時に破壊される可能性があります。
・低分子ヒアルロン酸
低分子ヒアルロン酸は、高分子ヒアルロン酸の分子を人工的に小さくしたもので、粒子が小さいため、肌への直接塗布やドリンクから吸収しやすい特徴があります。また、サプリメントからの摂取も可能です。ただし、分解が早いため、高分子ヒアルロン酸に比べてバリア機能の維持が難しいというデメリットがあります。
ヒアルロン酸の役割
多くの水分を保持する能力に優れているヒアルロン酸は、私たちの体内に豊富に存在し、各部位でさまざまな役割を果たしています。
・皮膚
肌の大部分を占める真皮にはヒアルロン酸が多く含まれていて、細胞と細胞の間に水分を蓄えることで乾燥を防ぎ、潤いを与えています。ヒアルロン酸の多い皮膚には潤いやハリがありますが、ヒアルロン酸が不足すると肌は乾燥し、ハリもなくなります。
・関節
ヒアルロン酸は関節の軟骨や関節液に含まれ、関節の動きをサポートしています。ヒアルロン酸の潤滑作用により骨と骨の摩擦が軽減され、その粘性がクッションのようになり衝撃から関節を守ります。
・目
硝子体には多くのヒアルロン酸が含まれていて、目の形状を維持したり、乾燥から目を守ったりしています。
ヒアルロン酸の生成
ヒアルロン酸の生成に必要不可欠なのが「線維芽細胞」です。線維芽細胞とは、細胞と細胞の間にある結合組織の基本となる細胞で、肺や心臓、皮膚など体のあらゆる場所に存在し、新陳代謝を活発にしたり傷を修復したりします。 肌(皮膚)の表皮と皮下組織を支え、肌のハリを保つ真皮にも線維芽細胞があり、美肌に重要なヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンを生成します。しかし、加齢により線維芽細胞の機能低下や数の減少が起こると、ヒアルロン酸などの生成も減少。また、紫外線による酸化ストレスが原因となり、ヒアルロン酸などが分解されて減少し、肌の老化が進むとされています。
ヒアルロン酸が減少することによる影響
ヒアルロン酸が減少することで、肌、目、関節などにさまざまな影響を及ぼします。
・肌への影響
肌の潤いや弾力を維持するヒアルロン酸が減少することで、乾燥としわが増加し、たるみが生じます。
・目への影響
目の中の硝子体にあるヒアルロン酸が減少すると、硝子体の潤滑性が低下し、ドライアイなどの問題が発生する可能性があります。
・関節への影響
関節の軟骨と関節液に含まれるヒアルロン酸が減少すると、関節の潤滑性が低下し、膝や肩、股関節などの関節に炎症を起こし、痛みを感じるようになります。炎症が長引くと変形性関節症を引き起こし、寝たきりになる恐れもあるので注意が必要です。
ヒアルロン酸の摂取方法
ヒアルロン酸は、フカヒレや鶏手羽、山芋、オクラなどたくさんの食べ物に含まれていますが、毎日これらの食品を摂取して必要量を補うのは大変です。また、ヒアルロン酸は分子が大きいため体内に吸収されにくく、熱に弱いこともあり、食べ物から吸収するのは難しいと言われています。よって、ヒアルロン酸を手軽に摂取するには、サプリメントや化粧品などを使用するのがおすすめです。
ヒアルロン酸の摂取には、「注射による摂取」「外用剤による摂取」「内服剤による摂取」の3つの方法があります。それぞれの摂取方法について詳しく見ていきましょう。
注射による摂取
注射による摂取は、ヒアルロン酸の成分を直接体内に取り入れられるので、短時間で最も効果が期待できる方法と言えるでしょう。美容外科でも人気の施術のひとつで、肌のハリや弾力が改善され、リフトアップ効果を得ることができます。ヒアルロン酸の種類にもよりますが、注射による摂取の場合、一般的に6カ月から1年ほど効果が持続すると言われています。しかし、時間の経過とともに少しずつ効果が薄れるので、定期的な摂取が必要です。
外用剤による摂取
外用剤とは、ヒアルロン酸が含まれる化粧水や美容液、化粧品などです。ヒアルロン酸配合のスキンケア化粧品は、「低分子ヒアルロン酸配合」と表記されているものであっても分子サイズが大きいため、肌には吸収されません。これは、表皮が分子量約2000の大きさのものまでしか通過させることができないのに対し、ヒアルロン酸の分子量のほとんどが約200万前後だからです。ただし、ヒアルロン酸には保湿性と弾力性があるので、ヒアルロン酸配合のスキンケア化粧品を使用することで肌表面に保湿膜を形成し、肌に潤いを与えてくれます。
内服剤による摂取
内服剤としてのヒアルロン酸は、サプリメントの形で摂取されます。この方法は、体内からヒアルロン酸を補充することで、肌はもちろん、関節の健康など全身にわたる効果が期待されます。肌の潤いや弾力の維持、関節の潤滑や痛みの軽減などが挙げられます。内服剤による効果は即効性は少ないものの、日々の摂取により体内から健康をサポートすることができます。
注射によるヒアルロン酸摂取の効果
注射によるヒアルロン酸摂取は、気になる箇所に直接ヒアルロン酸を取り入れられるので効果をすぐに実感することができます。多くの美容クリニックがヒアルロン酸注入治療を行っていますが、注射で直接ヒアルロン酸を注入することもあり不安に思う方も多いでしょう。
ここでは、ヒアルロン酸注射の効果や持続期間、メリットについて詳しく解説するとともに、リスクについても紹介します。
ヒアルロン酸注射の効果
ヒアルロン酸注射によって期待できる効果には以下のようなものがあります。
- しわや溝の改善(小じわ、ほうれい線、マリオネットラインなど)
- ハリや弾力の改善
- 唇のボリュームアップ
- フェイスラインを整える(あご、おでこ、こめかみ、ほほなど)
- 鼻を高くする
- 涙袋の形成
- 膝、肩など関節の痛みの軽減(整形外科)
ヒアルロン酸注射を用いることで、加齢によるしわやたるみ、ハリや弾力などの改善はもちろん、唇のボリュームアップや鼻を高くするといったプチ整形まで行うことが可能です。また整形外科では、膝や肩などの関節の痛みを抑える治療にも使用されています。
ヒアルロン酸注射の持続期間
使用するヒアルロン酸製剤の種類や注入量などにもよりますが、一般的に6カ月から1年ほど効果が持続すると言われています。治療後2週間程度で効果が安定し、時間の経過とともに少しずつ効果が薄れていきます。ヒアルロン酸注入の効果を長持ちさせるには、「症状や場所に合ったヒアルロン酸製剤を注入する」「定期的な摂取を続ける」「規則正しい食生活や睡眠を心がける」などといったことも大事です。
ヒアルロン酸注射のメリット
ヒアルロン酸注射の最大のメリットは、何と言ってもすぐに効果が実感できる点です。直接改善したい場所へヒアルロン酸を注入するので、外用剤や内服剤のように時間を要しません。また、施術時間も5分から10分ほどと短く、ダウンタイムも少なくてすむので、手軽に短時間でできるのも人気の理由でしょう。もし万が一、仕上がりに納得がいかなかったり、ヒアルロン酸を入れ過ぎて見栄えが気になったりしても心配する必要はありません。ヒアルロニダーゼと呼ばれる酵素の薬を注射部位の近くに注入することで、使用したヒアルロン酸を溶かして修正することができます。ヒアルロン酸やヒアルロニダーゼはもともと私たちの体の中にある成分なので、副作用やアレルギーが起こりにくいとされています。
ヒアルロン酸注射のリスク
ヒアルロン酸注射のリスクには以下のようなものがあります。
・腫れや赤み
注射後に一時的な腫れや赤みが発生することがありますが、通常、施術後数日から数週間で自然に治まります。
・アレルギー反応
ヒアルロン酸に対するアレルギー反応(かゆみ、じんましんなど)が起こる場合があります。
・内出血
注射部位周辺(とくに皮膚が薄い場所や毛細血管が多い場所)で内出血が起こることがありますが、数日から数週間で解消します。
・感染症
注入の際に細菌に感染することがあります。感染症を防ぐためには、施術前の手洗いや消毒など衛生管理がしっかりしているクリニックを選ぶことが大切です。また、持病があったり、病気で免疫力が低下していたりすると感染症を引き起こしやすくなるので、事前に医師に相談しましょう。
ヒアルロン酸注射を受ける際は、信頼性のある医師と十分に相談を行い、リスクや予想される結果について理解することが重要です。経験や実績が豊富で、衛生管理やアフターフォローがしっかりしているクリニックを選ぶようにしましょう。
外用剤によるヒアルロン酸摂取の効果
ヒアルロン酸を配合した化粧品はたくさんありますが、大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴や効果について見ていきましょう。また、よりヒアルロン酸の効果を高めるためにやった方が良いことについても紹介しますので、ぜひ、日々のケアに取り入れてみてください。
ヒアルロン酸の肌への効果
化粧品に配合されているヒアルロン酸には、以下の3種類があります。
・ヒアルロン酸ナトリウム
水に溶けやすく、保湿力が高いのが特徴で、肌の表面に蓋をして水分の蒸散を防ぐための乳液やクリームなどによく使われます。ただし、ヒアルロン酸の分子が大きいため、角質層の奥には入ることはできません。
・加水分解ヒアルロン酸
その名の通り、加水分解によりヒアルロン酸の分子を小さくしているため、浸透しやすいのが特徴です。浸透型ヒアルロン酸とも呼ばれ、化粧水や美容液などによく使われます。
・アセチルヒアルロン酸ナトリウム
ヒアルロン酸ナトリウムの約2倍の保湿力を持つのが特徴で、スーパーヒアルロン酸とも呼ばれます。角質層の表面から奥までを潤いで満たすことができ、化粧水や美容液、クリームなど幅広く使われています。
いずれも配合されているヒアルロン酸の分子量が大きく、真皮まで届くことはありません。しかし、肌表面に保護膜を作ってくれるので、肌の水分量が高まり、乾燥を防ぐことができます。ご自身の目的や悩みにあったヒアルロン酸を選ぶことで、より効果が実感できるでしょう。
ヒアルロン酸の効果を高めるためにやった方が良いこと
まず、肌の潤いを継続させるためには、低分子ヒアルロン酸が高濃度で配合されたスキンケア用品を選ぶことが重要です。そして、丁寧かつこまめにお手入れをし続けることが大切。顔につける前に手のひらで化粧水などを温め、顔全体を包み込むようにして塗布します。肌に手が吸い付くような感覚が得られるようになるまでじっくりなじませるのがポイントで、乾燥が気になる部分はしっかり保湿することが大切です。
内服剤によるヒアルロン酸摂取の効果
ヒアルロン酸が配合されたサプリメントやドリンクなどの内服剤は、体の内側から肌を潤すことができます。ここでは、経口摂取したヒアルロン酸の効果やヒアルロン酸を含んだ食べ物、効果を高める食べ方について紹介します。
経口摂取したヒアルロン酸の効果
経口摂取したヒアルロン酸は、大腸の腸内細菌によって分解され、血液中に入り、全身に循環して肌に行きわたります。すぐに効果は出ませんが、摂り続けることで体の内側から潤すことが可能です。また、しわやシミなどの老化症状を誘導する最も大きな要因のひとつである「紫外線ダメージ」にも、経口摂取したヒアルロン酸が有効だと言われています。最近では、ヒアルロン酸を低分子化またはナノ化して配合しているサプリメントなども多数あるので、外用剤などと併用してケアするとより効果が実感できるでしょう。
ヒアルロン酸を含んだ食べ物
ヒアルロン酸を多く含む食べ物には、ウナギ、魚の目、フカヒレ、鶏の手羽、鶏の鶏冠、鶏の皮、スッポンなどがあります。また、山芋や海藻、オクラ、納豆などぬめりの多い野菜や海藻などにも含まれています。
ヒアルロン酸の効果を高める食べ方
ヒアルロン酸を含んだ食品を食べても、それがそのまま皮膚や関節、筋肉などの必要部位に移動するわけではありません。分解されたヒアルロン酸は、必要部位以外のところでも利用されることがあるので、より効果を高めるには合成の際に必要となる栄養素「ビタミンB2、マグネシウム、亜鉛、脂肪酸」を含む食品を一緒に摂ると良いでしょう。また、ヒアルロン酸は半日から1日半ほどで消失してしまいますし、熱に弱いので、食べ物から接種し続けるのは大変です。サプリメントなどで補いながら、普段の食事に少しでも取り入れると良いでしょう。
まとめ
ヒアルロン酸は、肌に潤いやハリを与えたり関節の動きを滑らかにしたりなど、体にとって欠かせないものですが、年齢とともに減少するので外部から補わなければなりません。若々しく健康に過ごすためには規則正しい生活や睡眠リズム、食事からの十分な栄養摂取が大切です。さらに外部からの摂取だけに頼り過ぎず、足りない部分をサプリメントや化粧品、注入などで補っていくと良いでしょう。注射、外用剤、内服剤など、目的や予算などに合った方法での継続摂取も大切です。
参考文献